2012年からバレエ団の振付家を務めるリアム・スカーレット。
日本では「不思議の国のアリス」で知られるようになった
クリストファー・ウィールドンが人気ですが、
実はスカーレットのイギリスでの評価は大変高く、
「アスフォデル・メドウ」(2010)
「スイート・ヴァイオレット」(2012)
「不安の時代」(2014)「フランケンシュタイン」(2016)
などに代表される
成功を収めてきました。
![](https://thewells.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/IMG_2836-300x225.jpg)
ロイヤル・オペラハウスの正面外観
生粋のロイヤル・バレエ・スクール育ちの彼の
スタイルとしては、フレデリック・アシュトンの優雅さと
ケネス・マクミランのドラマ性を併せ持つ
まさに英国ロイヤル・バレエ団の未来を創り出していく
振付家であることは間違いありません。
そして芸術監督ケビン・オヘアが
伝統ある古典「白鳥の湖」の改訂を託したのが
スカーレットであることを見ても、
彼の信頼がどれほどのものか分かります。
「白鳥の湖」はバレエ団のクオリティだけでなく
その資金力さえ判断される
試金石とも言われる古典の代表作です。
比較的歴史の短いロイヤル・バレエ団でも
初演はド・ヴァロワ健在時の
前身ヴィック・ウェルズ・バレエ団
にて1934年。
以来、1963年にフレデリック・アシュトンが
振付に手を加えるなどして上演が続いた。
1987年に発表されたヨランダ・ソナベンドデザインによる
アンソニー・ダウエル版には
ディビッド・ビントレーもその振付に手を加え、
以降は長くその伝統が受け継がれてきました。
制作を打診されたスカーレットは
「デザインにジョン・マクファーレンが参加するなら」
という条件で引き受けたと言っています。
![](https://thewells.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/IMG-2977_R-300x225.jpg)
「11才の時、グラスゴーで初めてロイヤル・バレエ団による”白鳥の湖”を観ました。その時、私はこの業界で働くことを考えついたのです…。」(ジョン・マクファーレン)
マクファーレンは
「眠れる森の美女」など
多くのバレエ団のデザインを手がけ
その美しさ、豪華さで知られます。
そして予想通り、
新作「白鳥の湖」は
豪華絢爛な衣装や舞台セット
白鳥たちは羽音が聞こえるのではないかと思えるくらい
その崇高な美しさを表現した
シンプルなチュチュで登場してくれました。
![](https://thewells.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/IMG-2978-300x219.jpg)
ジョン・マクファーレンによる「白鳥の湖」衣装のデッサン
(そう、チュチュに戻りましたよ!
ダウエル版はひざ下までのスカートだったので、
脚の美しさが見えず残念だったのです。
やっぱり白鳥はこうでなくちゃです。)
スカーレットが初めて「白鳥の湖」の舞台を観たのが9才。
マクファーレンは11才。
ふたりとも、その時の感動は今でもはっきりと覚えているそうです。
(私が初めて全幕バレエを観たのも、11才の頃。
ロシアのレニングラード・バレエ団でした。)
多くの人がきっと
はじめて「白鳥の湖」を観た時の感動を
忘れずにいることでしょう。
イギリスのバレエの舞台では、
ダンサーももちろんですが、
実は「振付」や「デザイン(衣装やセット)」の方が
注目度が高く、話題が豊富です。
![](https://thewells.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/IMG-2976-300x225.jpg)
セットの仕上げに入る、ジョン・マクファーレン
プログラムを見ても、
振付家、デザイナー、作曲家、照明家の名前が
表紙に並びます。
![](https://thewells.co.jp/wp/wp-content/uploads/2018/06/34702225_1739585336110852_3170625160910733312_n-300x225.jpg)
スカーレット版「白鳥の湖」(2018)プログラムとジャスト表の表紙
こうして観客が振付家を育てる環境が
出来上がっているのです。
このブログを読んでくださっている
バレエ学生の皆さんも
コンクールや発表会で自分の踊る踊りが
誰の振付かというところに
ちょっと注目してみてくださいね。
きっと面白い歴史が見えてくると思います。
つづく。