2017年、皆さんは年始に立てた目標に向かってスタートを切っていることでしょう。
今年はThe Wellsも設立3周年を迎えます。
少しずつ、折りに触れ、イギリスのバレエやダンスについて書いていけたらなと思います(まったくの気まぐれですが、お付き合いください)。
今日はThe Wellsも大好きな、英国スタイルを代表する振付家サー・フレデリック・アシュトンについて、少し。
彼は英国ロイヤル・バレエ団の創立時ダンサーで、その時の芸術監督(つまりロイヤル・バレエ団の創立者)ニネット・ド・ヴァロアから勧められて振付を始めたそうです。
アシュトン作品については、ご存じの方も多いと思います。
「シンデレラ」や「リーズの結婚」「真夏の夜の夢」などの代表作は日本でもしばしば上演されていますね。
「シンデレラ」では男性ダンサーの演ずるシンデレラの意地悪な姉たち、「リーズの結婚」ではニワトリのダンスやリーズの母シモーヌの木靴の踊り、そして「真夏の夜の夢」では熊川哲也さんも演じた妖精パックと、いずれも個性的な振付とキャラクターが描かれています。
イギリスでは彼の楽しいバレエの数々が大人気で、ついにはバレエ団の芸術監督にもなりました。
今回、注目していただきたいのは、それらのキャラクターとは離れて、実際の振付のお話です。
アシュトンと言えば、「フレッド・ステップ」が有名なのはご存知でしょうか?ロイヤル・バレエ・スクールに入ると、ホワイト・ロッジ(ロウアースクール)から練習が始まりますが、アシュトンが作り出し、その作品の中に必ず入れていたシグニチャー(署名)です。(現代でもバレエの振付家はその作品の中に独自の振付を入れてシグニチャーとしている方を多く見かけます。同じ振付家の作品を観る時には気を付けて観てみてくださいね。)
ロイヤル・バレエ団が動画で説明していますので、見てみましょう。
こうして見るとシンプルなのですがバリエーションも豊富です(ビデオを持っている方はぜひ作品の中のフレッド・ステップを探してみてください)。
そして上半身と言えば、アシュトン・スタイルの優美で大きい上半身の動きは、とても特徴的です。今もロイヤル・オペラ・ハウスでのアシュトン作品のリハーサル室は「ベーンド!(もっと曲げて!)」という声が響いています。
この上半身の使い方は、彼がバレエ・リュス時代から尊敬するブロニスラヴァ・ニジンスカの影響を受けて使い始めたものですが、このニジンスカは、かのエンリコ・チェケッティの教え子です。
この曲げたりひねったりという、独特な上半身の使い方は、実はマエストロ・チェケッティの教えたクラシック・テクニックから派生したものなんですね。
ボディの正確な均衡を保持するマエストロ・チェケッティの教えがあったからこそ、大きく動かす上半身は地上でも、空中でも美しいポジションを作り出すことができたのです。
アシュトンはこうも語っています。
「私は常にチェケッティ・メソッドに対して、そしてそれが私に与えてくれた恩恵に対して、非常に大きな尊敬と感謝を抱き続けています。
私なら、全てのダンサー(特にビギナー)に、毎日この美しいポール・ド・ブラを練習させるでしょう。
その訓練は、素晴らしいラインの感覚、正しいポジション、頭とエポールマンの正しい使い方を身体に教え込み、そして、それが正しく刷り込まれたなら、ダンサーの生涯を通して計り知れないほど役に立つものとなるのです。」
バレエ指導者、そして上級者の方は、この機会にぜひ、ダイアン・ヴァン・スクーアによるマスターコース:エンリコ・チェケッティ・ディプロマで、アシュトンの言葉の意味を実感してください。
そして、バレエを志す全ての学生の方へ、ヴァン・スクーア先生のバレエ・マスター・コース(2日間)をお勧めします。
正確なポジションが奏でる美しさは一朝一夕にはできません。でもそのひとつでも知ったなら、次からのレッスンにきっと素晴らしい成果が出ることでしょう。
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