【2023年夏 学校公演レポート】イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール

2023年7月9日(日)@ピーコックシアター(ロンドン)
イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール 

今日も良い天気に恵まれたロンドンです。

昨年はウェルズのサポート生小川しずくさんと石川倫くんという2人のスターに大感動した、
イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールの学校公演。

今年はいつも楽しい留学レポートを送ってくれる
山田珠希さんが2年生で活躍されているので、
楽しみ倍増!で劇場へ向かったものの、、、、

なんと珠希さんがシルフィのメインで踊られたのは、
前日のみ(ファーストキャスト!)
ということで、彼女の出演回については、
留学レポートをご覧ください(涙)

観たかった、珠希さんのシルフィ

イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールの公演プログラムは、
演目数は5つと少ないものの、
ひとつずつが内容豊かで、
とても見応えのあるものでした。

そしてイングリッシュ校のキャスティングの特徴に、
学年問わず、作品に必要なダンサーが集められている、ということです。
そのため、観客は、キャスト表のダンサーの名前とプログラムにある学年ごとの生徒名を見比べて、
何年生なのかが分かるという仕組みです。

ブログの最後にデジタルプログラムのリンクを貼ってあります。

ちょっと大変だけれど、自分の好きなダンサーを見つけた時に、
何年生かな、と探す楽しさや、驚きもあります。

<バレエ>
★ラ・シルフィード(オーギュスト・ブルノンビル振付、Peter Shaufuss改訂版)
超有名なブルノンビル版ロマンチックバレエの傑作です。
長いスカートから覗く、素早く美しいフットワークは、バレエオタクにとっては見どころのひとつですが、
この日の私は、主役のメインシルフィの上半身に釘付けでした。
細やかな腕、指先、表情は、本当に絵本から抜け出してきたような妖精さんでした。

強く軽やかなフットワークがあってこそ、そのふわふわ感が表現されるので、
先生方がよく仰る、「上半身は柔らかく、足は水面下の水鳥のように動かしなさい」という指導を実現すると、
実は足オタクがみても、こんなにも足元が気にならないんだなということを初めて知りました。

そして驚くことに、この妖精さん(名前はLydia-Rose Houghさん)は、なんと1年生です。
いちねんせい=やっと17才になったところ
イングリッシュ校が大切にその才能を開花させて欲しいと心から願うひとりです。

インターバルには冷たい飲み物が欠かせません(劇場となりのコープで美味しそうなジュースを見つけました。

★Of Space and Time(アンドリュー・マクニコル振付)
男性だけの力強い、アブストラクト・バレエ作品
白い衣装に身を包んだボーイズの、超絶技巧あり、ジャンプありの楽しいバレエでした。
アンドリューは、RBS時代ケネス・マクミラン振付賞を受賞した将来を約束された振付家(毎年受賞者がいるわけではない賞です)で、
卒業後はセントラル校で振付修士コースを修了。
以来、精力的に作品を発表しているので、毎年楽しみにしている振付家のひとりです。
自身の「マクニコル・バレエ・コレクティブ」という彼の作品を踊るカンパニーを始動。
ENBS卒業生の石川倫くんもメンバーのひとりです。

<コンテンポラリー・ダンス>

★サウンド・アンド・ビジョン(Morgann Runacre-Temple)
★FLOCK(Monique Jonas)
どちらも群舞が織りなすシェイプと陰影が印象的な作品でした。
モーガンはアイルランド・バレエ出身。同団に全幕バレエを振付、またイギリスの多くのバレエ団に作品を提供しています。
セントラル・バレエ・スクール→ロンドン・コンテンポラリー・ダンス・スクールを経て、もう才能が自然とその道へ導いた人のひとりです。
受賞も多数。今年はJessica Wrightとふたりで創作した「コッペリア」が、国立批評家舞踊賞ベスト・クラシック・バレエ振付部門を受賞しています。
この方、今年はバレエ・セントラルに「The Queue」という作品を振り付けていますが、これも秀作。
セントラルの回で書きますね。

モニークは2022年のマシュー・ボーン「くるみ割り人形」で砂糖姫を踊っている、まだまだ若い振付家。
学生たちと息のあったクリエーションができたんじゃないかと思います(作品自体はちょっと既視感が否めないけど、学校公演なのでオケマル)

長々と振付家の話をしていますが、
私がここで言いたいのは、イギリスのバレエ学校に入ると、こんな人たちの創作現場に、当事者として関われるっていうことなんです。
海外のコンテンポラリー作品の創作過程は日本のそれとは大きく異なります。
ダンサーは振り付けられる対象ではなくて、作品を一緒に作り上げる同志です。
コラボレーションとはよく聞きますが、そこまでいかなくても、振付家は常に新しいアイデアやムーブメントのシード(種)を探しています。
創作過程でシードや意見、アイデアを求められた時に、応えられるダンサーになるべく、切磋琢磨のバレエ学校生です。

左からディビッド・ヤオ先生、珠希さん、レゲット

<最後は華やかにバランシン>
★Who cares?(ジョージ・バランシン振付)
バランシンがガーシュインの音楽に振り付けた、超有名作品です!
これを学校公演で上演しちゃうんだから、やっぱりENBSすごいな、という印象ですが、、、
今回、アメリカからバランシン・トラストのデボラ・ウィンガート氏を招聘してコーチングを依頼したのは、学校のニュースでも広報されていました。

〇〇トラスト(またはファンデーション)というのは、その振付家の作品が、正しく伝承され、上演されることを目的に発足し、その目的のためにメンバーに選ばれた精鋭によって、運営されている基金です。
資金源はもちろん上演料や指導料、個人的パトロンからの寄付によって賄われ、時には才能ある若いダンサーへ奨学金も授与されたりするトラストもあります。

イギリスではアントニー・テューダー・トラストやフレデリック・アシュトン・ファウンデーションがその振付や作品を守り、またマクミラン作品に関しては、マクミラン・エステートが管理していますが、現在、奥方のデボラ・マクミランの許可がなければ上演できません。恐らく彼女亡きあとはトラストなどの組織によって、その作品が守られていくことでしょう。

それぞれのスタッフは、上演の要請があれば、世界中飛んで行って、ダンサーを選び、振り付けを指導します。
プロのバレエ団の場合、最終的なキャスト選択には、トラストの方が意見を言うこともあります。
これ、なかなか厳しいですよね。

もちろん学生の場合は、そこまで厳しくはないと思いますが、
ENBSの生徒さんたちは、ガーシュインの音楽を見事に可視化したバランシンの世界を、生き生きと表現していました。
ジャズ要素の大きいこのエンターテイメント作品を、表現豊かに演じることができるのは、盤石なバレエテクニックがあってこそ。
3年間のトレーニングの集大成として、このような素晴らしい作品を踊ることができて、本当に良かったですね!
ブラボー!

デジタルプログラムがあるので、
こちらにリンクを貼っときますね。
(閲覧期限付きかもしれないので、お早目に)

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