海外の指導者の講習会を受講すると
「コーチング」という言葉を耳にします。
(年末の英国スタイル・バレエ講習会では「レパートリーコーチング」があります。)
「コーチング」とは、一般的に
指導者が個別に生徒にレッスンをすることなのですが、
バレエの場合、
レパートリーのコーチングであれば、
ソロなどの踊りを
指導者がそれぞれのダンサーに合せた
細かい注意をしながら教えることになります。
学校の場合は、
テクニックのコーチングもあります。
どうしたら上手くピルエットの3回転ができるのか、
大きなジャンプやトゥールのテクニックなど
学校の先生たちは、
その生徒に必要なアドバイスを的確に与える授業です。
プロの場合には、
もっとパフォーマンスを重視したコーチングになります。
指先、視線、背中、
音楽のとり方やパートナーとのタイミングなどなどなど
とにかく細かい注意が
指導者からダンサーへ与えられていきます。
イギリスのバレエは物語性があるとよく言われますが、
バレエという言葉を使わず
踊りで物語を伝える芸術では
この細かいひとつひとつの所作が
大きくものを言ってくるのです。
以前、ロイヤル・バレエ団の
プリンシパルダンサーが言っていたことを思い出します。
「今度、久しぶりに踊る役があって、振りはうろ覚えなんだけど、
踊り始めたら、当時のコーチの注意する声が聞こえてきた。」
100年に満たない歴史のイギリスのバレエ団では、
コーチングスタッフは
皆さん、元ダンサー、そして
振付家たちから直接コーチングを受けている方たちです。
自分がコーチングされたことは、
次の世代へも伝えることができます。
そうやって、伝統が引き継がれていくのですね。
皆さんも
プロダンサーから直接コーチングを受ける機会があったら、
一字一句、聞き漏らさないように努力してくださいね。
特に振付家から直接指導されているような
ダンサーから習う機会は特別です。
そのコーチングは、
何十年も受け継がれてきた伝統であり
その伝統の一部に触れることは、
滅多にない機会です。
英国スタイル・バレエ講習会では、
元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団芸術監督であり、
振付家でもあるピーター・ライト版の「コッペリア」を
元バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパルである
ディビッド・ヤオ先生と
佐久間奈緒さん自身が
皆さんにコーチングします。
将来コンクールや舞台でソロを踊る時、
きっとヤオ先生や佐久間さんの声が聞こえてくることでしょう。
ロイヤル・バレエ団のコーチングに関するビデオがありましたので、
ぜひご覧になってください。