ガーディアンリーダーの Kazuyoさんから 熱いレポートが届きました。卒業の日まであと1か月を切ったセントラル・スクール・オブ・バレエの3年生の皆さんによる、バレエ・セントラルの公演の様子です。なんと今年はロイヤル・オペラ・ハウスでの上演もあり2025年6月17日のマチネの様子を伝えてくださっています。大変長編の力作ですが 是非最後までお付き合いください!
こんにちは、温暖化の影響を受けて、こちら英国でも暑い日が続いています。現地のガーディアンより、バレエ・ツアーカンパニー「Ballet Central / バレエセントラル」について、そしてロンドン公演について、採れたての熱い現地情報をお伝えします!
★まず「バレエセントラル」について
Ballet Centralは、Central School of Balletの最終学年である3年生で構成されるツアーカンパニーです。
3年間の研鑽を経て、プロとしてのスタートを切る準備が整った若いダンサーたちが、締めくくりの夏タームの後半を使って、今年も英国各地の美しいシアターを巡ります。
★「バレエ・セントラル/Ballet Central」の英国ツアー
今年は合計9か所。
Google Mapsで場所を確認してみました。

© Google マップ / 画像は編集のうえ使用。
もう少し、地図に近寄ってみます!

© Google マップ / 画像は編集のうえ使用
基本的にはツアーは日帰りで、学校のあるロンドンのど真ん中から早朝、コーチに乗って、ツアー先に移動します。
生徒たちはのんびりする暇もなく、裏方作業やショーの準備をし、リハをし、ショーをやり遂げ、後片付けまで終えて、夜、帰途に就く、という、なかなかのハードスケジュールをこなします。
👉 2021年のギルフォード公演についてのブログもあります。興味のある方はこちらもぜひ:
Ballet Central is BACK!!! (バレエ・セントラル公演レポート)
★リンバリーシアターでのロンドン公演(6月17日)
さて、話は6月17日のロンドン公演です。ツアーも後半に入り、憧れのロイヤル・オペラ・ハウス内にあるLinbury Theatre / リンバリーシアターで、昼と夜の2公演が行われました。私は、ガーディアン代表として、昼の公演を観に行ってまいりました!

リンバリーシアターは、この写真の右側にある扉から入り、地下1階に降りたところにあります。
6月の間、このシアターでは、「Next Generation Festival 2025」という、英国内外の若いダンサーの公演が行われていて、本公演は、その一環として取り入れられています。

リンバリーシアターへ繋がる階段の手前に、本日・昼の公演のキャスト表がありました!早速、ウェルズのサポート生のみなさんと、1年生から見てきた日本の生徒さんたちの名前を確認。(QRコードでキャスト表のデジタル版も手に入れました。)



プログラム(£5)売り場で、プログラムを購入。
表紙を飾る作品は、ドガの世界感そのままの「Foyer de danse」。ポアントシューズの紐を結んでいる踊り子は、サポート生のTamaki Nakagawa/中川環さんです!Ayane Ogino/荻野絢羽さんとともに、絵から飛び出してきたようです。
(※Wells注:Tamakiさんの撮影秘話はいずれまたご紹介します)
開演直前、アーティスティックダイレクターのケイトさん、エクゼクティブダイレクターのマークさんにも挨拶できて、ますます、気持ちが高揚していきます。


シアター内に入りました。一番前の席です!リンバリーシアターの最前列は、ステージとぴったりくっついていて、ちょうど座ると目線の先に床が見えます。
上手に、バレエ・セントラル音楽監督のフィーニーさんと、ミュージシャンの方々が現れました。いよいよ開演です。本日の演目は全部で4作品。
(Ballet Central の演目一覧はこちらから)
- FEAST (Kristen McNally)
- Rise (Dickson Mbi)
- Foyer de danse (Frederick Ashton)
- Keeping Up with the Apocalypse (Thick & Tight)
★FEAST (Kristen McNally)

ロイヤルバレエ団のプリンシパル・キャラクター・アーティストのKristen McNallyの作品。
人々の繋がり、コミュニティの形成、共存の喜び、などがテーマです。
涼しげな布を身に纏ったダンサーたちが、マネキンのようにすました感じで颯爽と登場。明るく、軽やかに、そして鮮やかに踊ります。フィーニーさんの紡ぐシンセサイザーの電子音と、ミュージシャンの弦楽器の組み合わさった生演奏が心地よく、大変爽やかな印象の作品でした。ウェルカミングな雰囲気は、1作品目にぴったりです。
★Rise (Dickson Mbi)

カメルーン生まれ、ロンドン育ちの、才能あふれるDickson Mbiによる作品。地球の振動と、温もりがテーマでした。ここで、サポート生のRiko Sakai/坂井梨瑚さんがオープニングのソロで登場!
地球の深いところから地表に昇って誕生した、女神のようでした。鍛え上げた後ろ姿、しなやかな動きに魅了されます。
一方、地表には、まるでアザラシのように、手を使わずに体で這う群舞が。地表のうねりを現しているのでしょうか。対比が面白い作品でした。中盤には、アザラシ(!)だったサポート生のAnju Irisawa/入澤杏樹さんが、V字のセンターでご活躍、至近距離で堪能しました。首だけ動かした、鳥のような動きも登場。パワフルなエンディングで、自分的には、Dicksonさんの伝えたいこと、分かった気がします!
★Foyer de danse (Frederick Ashton)

この作品は、フレデリック・アシュトンが創作した100以上のバレエ作品の中の1つ。1932年にロンドンで初上演でしたが、その後レパートリーから外れ、90年もの間、上演されることはなかったそうです。
この度、バレエセントラルが、「The Ashton Worldwide 2024–2028 festival」の一環として、ドガの名画にある、バレエの舞台裏の世界を蘇らせたのです。(この背景には、レペティトゥールのUrsula Hageliさんによる、10年以上に渡った作品の発掘調査、再構築があります。)
※Wells注:https://thewells.co.jp/blog/33554 こちらでもご紹介しています
こちらの作品には、サポート生のTamaki Nakagawa/中川環さん、そしてAnju Irisawa/入澤杏樹さんがご出演。クラシックな白いドレスに大きなリボンのアクセントが、とても素敵でした!クラシックバレエって、やはり観ていてうっとりします。
バイオリン、クラリネット、ピアノの織り成す美しい音楽に合わせて、舞台裏での優美なバーレッスンのシーンがあったり、クラシカルな要素が満載で、バレエの歴史を存分に感じることができた作品でした。遥か昔の作品とあって、動きも今の様子と随分と違った、ということですが、丁寧に研究され、よく仕上がっていたと思います。
★Keeping Up with the Apocalypse (Thick & Tight)

バレエセントラル、最後を飾る作品は、Thick & Tight(DanielとElのお2人)による、地球の未来について – 遥か先の、荒廃した未来を描いた作品です。「カーダシアン一家」って、ご存知ですか?私は、個人的にはよく知らないのですが、実在するセレブタレント、金銭至上主義で有名な、その一家のみが生き残った、という設定で、彼らが地球の全てを巻き込み、世の中がどんどん不条理な方向へと進んで行くというストーリーです。宇宙人的であり、グロテスクとも言える、赤銅と黒光りする衣裳で、独特な、ブラックホールの世界に吸い込まれていきます。
宇宙のどこか遠いところで起きている様でもあり、実はそこまで来ているんだと訴えられているような、そんな舞台でした。
この作品には、ひと際目を引くサポート生、近藤かえでさんがご出演。そして、先の舞台から衣裳替えしたRiko Sakai/坂井梨瑚さん、ウェルズでサポートした、Koh Takamoto/高本洸有さんの姿も、1列目なのでしっかり確認できました。みんな、首まで黒く塗っているので、顔が浮き上がった感じ。すっかりカーダシアンを好演していました!

★舞台を終えて
舞台を終えて着替えを済ませたサポート生のTamaki Nakagawa/中川環さん、Anju Irisawa/入澤杏樹さんが、忙しい合間を縫って、顔を出してくれました!2人とも、疲れも見せず、清々しい表情です。
まず、、1列目の私のことは、舞台の上からでもしっかり確認できたそうです!(舞台に変な影響が出ていなかったことを祈ります。。)
ひとしきり感想などお伝えし、夜の公演について尋ねると、私が今回観た昼のキャストと、夜のキャストとでは、全く異なることが判りました。。。できれば全部観たかった!
最後の作品の、あの宇宙人的な人々の被り物は、もともとは水泳帽からできていることが判りました(やっぱり!)。そして、首を黒く塗るのは、毎回大変みたいです(笑)。メイクを取るのも大変そう。(※だからカーダシアンのみんなは、顔を見せに出て来られなかったのかな?!)※Wells注:衣装も一人では着られないそうです・・・・
ツアーを進めて行く中で、ますますクラスの仲間たちとの絆が深まっている3年生。
多くの時間を費やして練習してきた作品が、あと数回で終わりになってしまうのは、やはり寂しいようです。卒業後、バレエ生はみなそれぞれの進路を歩んで行くのですから、当然、様々な気持ちが交錯していると思います。
色々と話を聞いていたその時、バレエ公演を観に来た小さい女の子(その立ち姿から、バレエ経験者と思われる)に、「一緒に写真を撮って!」と頼まれていたお2人。快くカメラに収まる様子を見守りながら、舞台人としての、キャリアが始まったんだな、と、嬉しくなりました。
次の舞台の準備の集合時間が迫っていたことが判明し、2人は、足早に去って行きました。そんな背中を見送りながら、みんなが体調万全で、最後の7月のロンドン・Britten Theatre公演を迎えて欲しい、と心から祈りました。
最後のロンドン公演、そして卒業式には、お2人とも、日本からご家族がいらっしゃるということです。いよいよ嬉しい日が近づいてきているのだなと思いました。
次回お会いできるのが、とても楽しみです!
おまけ★舞台裏の様子
杏樹さんにお願いして、お写真をいくつか頂きました。舞台裏の、いい写真ばかりです!

左から2番目 Tamaki Nakagawa
3番目 Anju Irisawa

Anjyu Irisawa, Kaede Kondo


後列右から4番目 Anju Irisawa
前列左端 Riko Sakai

Kazuyoさん ありがとうございました。
ガーディアン歴が長くなると皆さんバレエや舞台にもどんどん詳しくなってこられ、またサポート生たちがみんな我が子のようにいとおしくなってくる様子が伝わってきます。
さあ、3年生のみんな!卒業式まであと少し。
どうぞ健康には気を付けてプロになる前の二度とないこの時間を楽しんでください。
続々と学校公演や卒業公演の様子も更新する予定です。