今回の「白鳥の湖」ファースト・キャストとされたのが
この二人でした。
今や、
バレエ団の顔であることは
間違いありません。
ムンタギロフの舞台は
新国立劇場で気軽に観ることができるのですが、
やっぱり
なんとなく
こう言ってはなんですが、
とても違うんです。
恐らくリハーサルにも
物凄く時間をかけるし
意気込みも違うのかもしれません。
彼の完璧なテクニック
美しい5番や
アラベスクのラインに加えて、
若々しい王子ジークフリートの
悩みや苦しみが
痛いほど伝わってくる演技力
(これは年々素晴らしくなってきます)
以前イングリッシュ・ナショナル・バレエ団で観た
ダリア・クリメントヴァとの「白鳥」で感じた
「演技しています」感のようなところが
すっかりなくなっていました。
スカーレットの演技指導でしょうか。
長身に長い手足
恵まれたスタイルにも関わらず
速い足さばきも
高いジャンプも
あくまでもノーブルにこなします。
どれだけ強いコアマッスルなんでしょう。
3幕のソロでは
このために練習していたらしい
ダブル・トゥール・アン・レールを2回続けて跳ぶ、
という大技を3回続ける
という信じられない大技を
「毎回5番のプリエで美しく着地し
音楽に合わせて踊る」
という信じられない技を見せてくれたので
私たちはワォとしか言えません。
(隣の方たちは、あまりの凄さに、
笑ってしまっていました)
彼がジュッテやジャンプをしていると
美しいサラブレットを思い起します。
それほど、力強く美しい
王子ジークフリートでした。
そして、
オデット/オディールは
大好きなヌニェスです。
もう昔のことになりますが、
このダンサーに出会って
私は初めて
「観る人を幸せにする」
ということが本当にできるんだ
と実感を味わうことができました。
彼女のオデットは
2幕で袖から飛び出して
センターに着地した時から
舞台の全てを支配します。
白鳥は大きな鳥です。
決して小鳥ではありません。
その優雅さと存在感を表現するのは
可憐なダンサーには難しい役柄です。
今回のオデットに
飛ぶ鳥を落とす勢いの
フランチェスカ・ヘイワードがキャスティングされていないのは、
もしかしたら彼女が小さすぎるからかな
と仰っていた方もいました。
演技派で
テクニシャンで
全てを兼ね備えた
マリアネラ・ヌニェスが
このタイミングで新版「白鳥の湖」を初演できたことは
奇跡に近いかもしれません。
それほど
気力も体力も充実した
プリマドンナの踊りを堪能させていただきました。
3幕でのオディールと王子のパ・ド・ドゥ
最後で王子を跪かせる瞬間には
もうこれ以上の高揚感はない!
という最高のタイミングでフィニッシュしてくれました。
そして30分の幕間に
どのようにして楽屋でオデットに変身するのでしょう。
誰も寄せ付けない孤独にいるのか
はたまた
明るい彼女の性格のままに
おしゃべりしながら着替えを済ませるのか。
いずれにしても
その集中力は半端ではありません。
失意に暮れるオデットの悲しみは深く
王子の再三にわたる謝罪の言葉も
彼女を救い出すことはできません。
最後に一瞬だけ
赦したようには見えましたが、
それは諦めに似た境地だったように
私には見えました。
彼女が身を投げたのは
王子を救うためだったのか
呪いから解かれず
一生をロットバルトの所有物として生きながらえるより
自らの死を選んだのか。
スカーレットの中では
この物語は悲劇です。
王子や白鳥たちがロットバルトを退治するわけでもなく
オデットと王子の愛が呪いを破るわけでもなく
二人が死して共に天国へ召されるわけでもありません。
悲劇は悲劇として描く
スカーレットの流儀ですね。
今回はカメラが入っていたので、
日本でも東宝シネマさんがきっと上映してくれます!
必ずもう一度、
観に行きます!