19世紀後半のフランスで生まれた、とても古いバレエ「ジゼル」
原作の振付はジャン・コラーリとジュール・ペロー、その後マリウス・プティパが手を加えて普及の名作となりました。白鳥の湖と並び、最も上演数の多い作品の一つではないでしょうか?
Kバレエの「ジゼル」はプティパの振付をほぼ踏襲した古典の美しいバレエでした。
今回はドイツやオーストリアでプリンシパル・ダンサーとして活躍後、今では文化会館を満席にするほどの人気を誇るKバレエ・プリンシパル(シーズン・ゲスト)中村祥子さんが初めてタイトル・ロールの「ジゼル」を踊るということもあってか、会場は開場前から長蛇の列。ウェルズもワクワクしながら列に並びました(この開演前のワクワク感がたまりません!)
これまで「ミルタ」役が多く、たくさんのジゼルと踊ってきた中村さん。一番印象に残っているのは、アリーナ・コジョカルのジゼルだったそうです(ものすごく納得!)。歩くだけの登場シーンに尋常ではない存在感を感じたそうです。
中村さんのジゼルは、1幕では村娘としては少し大人びた印象ですが、他の娘たちとは異なるオーラを放つ、凛とした美しさ。高貴な生まれであるアルブレヒトがいたずらに好奇心から心を奪われたのではないということが伝わってきます。
ウィリになってからは一転、揺るぎないテクニックで音もなく着地する浮遊感を演出。そして何より、極めて抑えた感情表現が、かえってジゼルの悲しみと愛の深さを伝えていました。ウェルズがジゼルの2幕を見る時の二つの大きなキーポイントもばっちり決めてくださったのは、さすが世界の舞台で活躍してきた中村さんです。
そして今日は、もうひとつ。
ミルタ役の山田蘭さんにも注目でした。
身長にすると中村さんジゼルの方が、はるかに高く、ちょっと普通のイメージからは異なる組み合わせでしたが、山田さんのミルタは、その登場シーンのパ・ド・ブレの美しさから目を奪われました。
いつも強く怖いミルタですが、山田さんからは、かつて人を愛した女性のやさしさや柔らかな心が見え隠れして、とても美しく悲しいミルタでした。
もしかしたら「弱い」と感じられる方もいるかもしれませんが、ウェルズの目にはとても新鮮で、中村さんの大きな存在感とうまく対峙したなぁと感心しきり。とても好きなミルタでした。
セントラル・スクール・オブ・バレエの卒業生、片岡沙樹さんもウィリ群舞で出演しました。
お馴染みのウィリ群舞がアラベスクで舞台を入れ違うシーンでは、程よくブルーがブレンドされた照明がダンサーの白いドレスに映えてとても幻想的でした。入れ替わる前に少し斜めに並んでくださるのも素敵な演出。
準団3年目の今年、正団員への昇格のニュースを心待ちにする毎日です。
セントラル校の卒業生からは、新たに準団員として佐野奏実さんが加わりました。また2015年に一緒にサマースクールに参加した由井里奈さん、渡邊真友さんも同時に準団員で入団です。
ますます目の離せないKバレエ・カンパニーです!
(2017年6月23日:上野・東京文化会館)