毎年、多くの留学生がバレエ学校を卒業後に、ダンサーとしての道を歩き始めます。
私達が柚香さんと出会ったのは、まだ彼女が中学生のころの2015年の秋。
翌年のサマースクールにもご一緒して、2018年にエルムハースト校に合格、秋に入学されました。
エルムハーストで学び続ける傍ら、
休みごとに帰国して日本の高校も卒業されるなど
本当に才能もありつつ努力を欠かさない存在です。
柚香さんから近況報告を頂きました。
コロナ禍で一番大変な時期が卒業と就職活動に重なった中、
悔しい思いも残念な思いもたくさんあったのに強い意志で過ごしていた柚香さん。
留学を考えている中学生、現在留学中の皆さんにもとても響く言葉がたくさんあるので是非ご一読下さい。
在学中の柚香さんの記事はこちらから 【留学生レポート】エルムハースト・バレエ・スクール:小暮柚香さん
皆さん、こんにちは。
カイロ国立バレエ団(Cairo Opera Ballet Company)に所属しています、小暮柚香です。
2021年にイギリスのバーミンガムロイヤルバレエ団附属エルムハーストバレエスクールを卒業し
その後エジプトのカイロでプロフェッショナルキャリアをスタートしました。
The Wellsさんとの出会いは
日本で行われたバレエスクールの入学オーディションでした。
その後、イギリスバレエ留学への道をいただき、
また将来、海外でダンサーキャリアを続けるためのチャンスだと思い
アッパースクールから3年間、バレエ学校への入学を決めました。
留学当初、未成年だった私は
現地イギリスでもThe Wellsさんから様々なサポートをしていただきました。
特に現地ガーディアンのMさんからは本当に親切にしていただき
現地で苦しい時の支えになりました。
本当に感謝しています。
エルムハーストで過ごした3年間は私にとって宝物です。
1番に思うことは、
プロフェッショナルな教師陣に指導していただいたことが
プロになったいま、いかに贅沢な時間で、
正しいバレエの知識をインプットできていたか
ということに気付かされます。
なぜなら現在、バレエ団のクラスでは
ディレクターやミストレス、マスターから
注意やコレクションを貰うことはほとんどありません。
入団した当初の私は、どうしても受け身の姿勢だったため、
自分の踊りは客観的にどのように見えているのかなど、とても不安でした。
いまは学生時代にインプットした知識を自らアウトプットするよう心がけています。
エルムハースト在学中、最終学年になった私はバレエ団就職のため
オーディション活動をしていましたが、その頃はコロナ真っ只中でした。
渡航は全く出来ず、
zoomを繋いで行うオーディションしか方法がなく
クラスメイトが続々と就職先や今後の進路が決まっていく中、
卒業間近になっても私だけオファーは一つもありませんでした。
挫けそうになったこともたくさんありましたが、
プロになるのだと自分を鼓舞し頑張り続けた結果
ENBやいくつかのジュニアカンパニー、
カイロ国立バレエ団から
オファーをいただくことができました。
どれだけ時間がかかっても、目標を持ち、
続けることだけを自分に言い聞かせていました。
在学中には残念な事もありました。
バレエ学校卒業の3年間の集大成を締めくくる、
卒業公演、全校公演、卒業式やプロムが行われる予定でした。
卒業公演では主役を任されていたこともあり
緊張と期待とでワクワクが収まりませんでしたが
そんな中、クラスメイトからコロナ陽性者が出てしまいました。
本番は次の日にまで迫っていましたが
全てキャンセルを余儀なくされました。
まだコロナが流行り始めた頃だったこともあり
制限は厳しく、イギリス政府の方針に従わざるを得ませんでした。
その当時、正直言葉も出ず
不完全燃焼のまま終わってしまった学生生活も
いまとなっては私にとって一つの思い出です。
進路は、
ビッグカンパニーのジュニアカンパニーに行くか、
カイロ国立バレエ団でプロの道に進むか、
迷いました。
多くの先生からは
ビッグカンパニー附属のジュニアカンパニーを勧められましたが
私を支えて来てくださった先生から、
”いつまでも学生でいるのではなく プロのダンサーになる事が目標なら オファーをもらえた時にしっかり掴み プロのキャリアを積みなさい。”
との一言でカイロ国立バレエ団に進む事を決めました。
今考えても自分にとって良い判断だったと思い
アドバイスをしていただいた先生に感謝しております。
エルムハースト卒業から2ヶ月後。
2021年の9月頃に1人でカイロの空港に到着し
新しい場所での生活が始まりました。
初めてのアフリカ大陸。
イギリス、ヨーロッパで過ごした生活とは
比べものにならないくらい衝撃的でした。
また、そのときに感じたことは
”学校”と”職場” の違い。
黙っていては誰も助けてはくれません。
カンパニーでは1人の団員として、
どのように存在感を放ち続けるか、
ディレクターに求められること、
ダンサー同士の助け合いや信頼関係、
与えられた仕事に対する姿勢などを
自分自身で考え、判断し、対応
していかなければなりません。
カイロでの生活はとても刺激的です。
イギリスのような先進国とは違い、まだまだ発展途上国ということが現状です。
生活習慣や人種、宗教など様々で
毎日がチャレンジの繰り返しですが
ダンサーとして、人として、
自分の経験値を積んでいく過程だと信じて頑張っています。
現在はカイロに来て2シーズン目です。
今シーズンになってから、
”ロミオとジュリエット”よりジュリエットの友人、
”くるみ割り人形”より中国の踊りなど、
少しずつソリストの役を任せていただけるようになり、
ステップアップしながら頑張っています。
また仕事と並行して、自己管理と自己判断を身につけ、
与えられた仕事にいつでも対応できるよう
身体のケアを日頃から心がけなければなりません。
”無理をしなければいけないときと 無理をしてはいけないときがある”
これは私にとって永遠の課題です。
エジプトという地で、
未知の世界でのチャレンジに不安と期待でいっぱいでしたが、
周りの人達にたくさんサポートしていただきながら
充実した生活を送ることができています。
私自身もダンサー生活のスタート時点に立ったばかりです。
自分で選んだ道に責任と誇りを持ち、
今ある環境に感謝してバレエができる喜びを胸に
これからも頑張っていきたいと思います。
小暮柚香
柚香さん、ありがとうございました。
今後もずっと 小暮応援団!としてエールを送り続けます。
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