英国コンテンポラリー・ダンスを牽引するニュー・アドベンチャーズ
~チャイコフスキー三大バレエ音楽の集大成はゴス!~
久々の舞台レポは大好きなマシュー・ボーン版「眠れる森の美女」です。
男性だけの白鳥たちによる「白鳥の湖」の大ブレイク以来、いつも驚きの舞台、ストーリーとダンスで私たちを楽しませてくれる、サー・マシュー(イギリスでは受勲されて“サー”の称号です!)。
今回もサブタイトルに“A Gothic Romance”(ゴシック・ロマンス)と付いているように、通り一遍のおとぎ話ではありません。
2012年の初演時にもご本人が語っていますが、彼は1697年のペローの原作から、1812年のグリム兄弟による「いばら姫」そして1959年の有名なウォルト・ディズニーまで、幾つもの「眠れる森の美女」を読むことから物語作りを始めたそうです。
おとぎ話なので、「Once upon a time…(昔々、あるところに….)」から始まるのは不変として、そこには「絵に描いたような幸せなロイヤル・ファミリー」ではなく、「跡継ぎとしての子宝に恵まれない王と王妃」がいます。
(ああ、かわいそうに。もしかしたら、ふたりはいつもその件で口論していたのかもしれない…。王妃は宮廷でも針のむしろだったかもしれない。)
サー・マシューはきっと、「What if…,What if…(もしこうだったら、もしああだったら)と空想を重ねて物語を広げていったに違いありません。
「自分たちの王位を継承させる子宝に恵まれなかったら、彼らはどうする?」
そこで、例のヴィラン、カラボスの登場や彼女の呪いに更に説得力のある意味が付加されます。
そして現代に生きる私たちの多くが持つ「100年眠った後で、一目見ただけの王子様と、どうやって結婚できるんだろう」という疑問や不満にも、この舞台はしっかり答えてくれます。
(そうよ!そんなに上手くいくわけがない!)
そして何よりライラック伯爵や妖精たち、そしてカラボス(の息子!)たちの正体にも驚かされます。
「なるほど、そう来たか!!」
サー・マシューの作品には、いつもいつも新しい発見や発想の転換、物の表裏を教えてもらって楽しくて仕方ない。
振付はコンテンポラリーのカンパニーらしく、ダンサーたちにテーマを与え、それぞれがクリエイトしたピースをディレクターがまとめます。
ウェルズ個人的な好みとしては、妖精たちとそのソロ、そして眠っているオーロラ、レオ(原作の王子)、ライラック伯爵の3人が踊るアダージョ。素敵でした♡
キャストは当日の発表
そして、この作品の舞台・衣装デザインは「白鳥の湖」「シザーハンド」「蠅の王」他、多くのニュー・アドベンチャーズ作品を手掛けるレズ・ブラザーストン(Lez Brotherston)。プティパの同名バレエ作品もクラシックバレエの中では、デザインの豪華さでダントツですが、こちらもあっと驚く仕掛け満載のデザインで、出来ればロビーに衣装を展示していただきたかった!
おとぎ話を現代社会に置き換える説得力のある物語、そしてコンテンポラリー・ダンスならではの自由な発想、歌のないミュージカル、ダンス・ミュージカルと呼ばれる所以でしょう。地元ロンドンでも、老若男女、とてつもなく幅広い観客層を誇るニュー・アドベンチャーズ。
今回の来日公演も、いよいよ今日が最終日です。
次回の来日が今から待たれますね!
そして、最後までお付き合いいただいた方へ特別に。
ニュー・アドベンチャーズにはたくさんのセントラル・スクール・オブ・バレエの卒業生が在籍しています。
今回の公演でライラック伯爵を踊ったニュー・アドベンチャーズの振付アシスタント兼プリンシパルのクリストファー・マーニー氏もそのひとり、そして、現バレエ・セントラルの芸術監督です。こちらは先日、就任初年となる今シーズンへの豊富をお聞きした時のワンショットです。