【ニッポンレポ】ロイヤル・バレエ団マクミラン振付「ロミオとジュリエット」(2016年6月19日、東京文化会館)

史上最強、マクミラン版「ロミオとジュリエット」

三年振りのロイヤル・バレエ団来日公演、マクミラン版「ロミオとジュリエット」を観て来ました。巨匠マクミランの三大バレエのひとつです。(あとの二つは「マイヤリング」と「マノン」)

プロコフィエフの音楽を一音と無駄にせず、悲劇を描ききったイギリス人振付家ケネス・マクミランの偉大さを、観る度に思い知らされ、感動に浸る作品です。

マクミランのバレエでは、かつて振付家が「美しく見せようと思うな」とダンサーに要求したと言われていますが、文字通り、バレエというより、演劇的な要素が大きい場面が多々あります。
象徴的なのは、ジュリエットがパリスとの結婚を強要され、ひとり残った部屋で神父に助けを求める決心をする場面でしょう。

流麗な音楽が流れる中、ただベッドに腰かけています。
観客はそれを見て、彼女の心の動きを感じ取ります。
これ、結構長い時間なんですよね。
ここで、観客の心をキープし続けることができるかどうかは、マクミランダンサーとしての質が問われるところです。

そしてもうひとつ、マクミランが凄い!と思うところは、ジュリエットが毒薬を飲むまでにかける、ちょっとばかり長い時間に心の迷いを見せた一方で、墓場でロミオが息絶えているのを見るや、迷わず即座に自らに短剣を突き刺すところ。

この衝動的にも見えるほどの速さが、観客に頭で考える隙を与えず、心にグサッと突き刺ささる感動を与えるのです。

いや~、今回もまばたきするのも忘れるほど、舞台に魅入ってしまいました。

今回のジュリエットは押しも押されぬ世界のプリマ、マリアネラ・ヌニェスでした。
彼女のジュリエットはもう数え切れないほど観て来ましたが、常に深化しています。

少女のジュリエットがロミオを愛することで、女性として目覚め、そして命を絶つまでの短い物語ですが、彼女の一挙手一投足には全て心があります。

決して演技過剰にならず、自然体というマクミランが求めたダンサーのひとりなんですね。

そして、今回のロミオは実生活の元ご主人ティアゴ・ソアレス。
彼はバレエ団のプリンシパルではありますが、決してカリスマ的なダンサーではありません。
ただマリアネラと踊る時のケミストリーは別格です。

今年に入って残念ながら離婚という報道がありましたが、彼女が世界で一番信頼を置き、長い時間を共に歩んできた同志ですから、最良のダンスパートナーであることは当たり前なのかもしれません。去って行ったロミオを想い窓辺に佇む彼女の後姿には誰しもが涙するでしょう。

マリアネラは昔から見る人を幸せにするダンサーだと思っています。
これは努力や練習では習得できない、持って生まれたものでしょう。
Born to Dance.

舞姫の次の舞台は「ジゼル」です。

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