「ザ・ウェルズから愛を込めて!コンテンポラリー・ダンスの講習会を開催するその理由。」
4回にわたってイギリス留学生の声をご紹介した「コンテ、やっといた方がいいよ!」シリーズでしたが、最終回は番外編として、ウェルズがコンテンポラリー・ダンスの講習会を開催する理由についてお届けしたいと思います。
イギリスのバレエ学校から先生方をお呼びして、講習会や学校の入学オーディションを開催したり、逆に日本からイギリスへ短期または長期に留学するバレエ学生さんをサポートしたりということで、多くの皆さんと関わりを持たせていただいているザ・ウェルズですが、それでも、敢えてなぜバレエ講習会花盛りの夏の東京で、このコンテンポラリー・ダンス講習会という企画を実施するのか、それにはふかーい理由があるのです。
Q: どうしてコンテンポラリー・ダンスの勉強が必要なんですか?
A: 昨年8月に2日間だけ開催した講習会には、イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクール、セントラル・スクール・オブ・バレエ、ランベールの在校生、そしてこれから入学を控えた学生さんたちも参加されました。そのことからも、現地でバレエを学ぶ学生さん達が、コンテの難しさ、そして必要性を痛感していることが分かるでしょう。皆さん、日ごろからYou-tubeや舞台鑑賞を通してコンテンポラリー・ダンスの理解に努めていますが、実際に集中して身体を動かすことで、自分の中のクリエイティビティ(創造性)を育てることの意義を知っているんですね。
Q: 海外でクラシック・バレエは人気がなくなってきたのですか?
A: 歴史上、西洋の資金豊富な国々の王族や貴族のサポートで発展してきたクラシック・バレエの作品は、準備期間も長く、セットや衣装も豪華で、上演するのにとてもお金がかかります。残念ながら、昔のように芸術に資金援助する国や政治家が少なくなってしまった今日では、こうした大きなクラシック作品を多く上演できるバレエ団は、殆どなくなってしまいました。もちろん「くるみ割り人形」や「白鳥の湖」は観客からの人気も高く、上演が続いていますが、シーズン中、クラシック作品は1つか2つというバレエ団がほとんどでしょう。逆にコンテンポラリー・ダンスの作品は、比較的衣装がシンプルで時間も上演時間も1時間くらい、照明やセット、音楽に工夫を凝らし、オーケストラを使わないことも多くあります。これが海外のバレエ団では、近年益々コンテンポラリー・ダンスの演目が増えてきた理由のひとつと言われています。また、いつの時代でも、新しいものを観たいというお客さんがいてこそ、芸術が発展していくので、バレエ団もそんなお客さんのリクエストに応えているのも現状です。地元の人に大人気のパリ・オペラ座バレエ団でも、クラシックよりコンテンポラリー・ダンス作品の公演の方が先に売り切れるという状況で、毎年意欲的に新作を発表しています。
Q: どうしてバレエ以外のダンスが必要なんですか?
A: 日本ではバレエのレッスンを始めたら、他のダンスはお稽古しないことが多いようですね?海外では逆に、バレエを週に2回習い始めたら、それ以外にタップやジャズ、民族舞踊やモダンダンス、コンテンポラリー・ダンスなどのあらゆるダンスの中から好きなものを選んで、同時進行します。それはバレエの先生も勧めることなんです。バレエのお稽古は初め、足や腕のポジションや姿勢といった基本動作に時間をかけて教えますが、その他のダンスはもっと自由に「音楽」や「リズム」に合わせて身体を動かすことに重点が置かれます。小さい頃に体に染み付いた音楽性やリズム感は、大きくなっても決してなくなりません。日本からの留学生が、まず最初に驚くのが、このヨーロッパの学生たちのダンスレパートリーの多さなんです。16才でもクラブやヒップホップなど、ガンガン踊れるなんて驚きですね!
Q: 5日間は長過ぎませんか?
A: もし将来、海外のバレエやダンスの学校へ留学したい、または専門学校で学びたいと思っているならば、想像してみてください。月曜日から金曜日、または土曜日も、毎日朝から一日中ダンス漬けです。一見楽しそうに思えますが、実はこれ、身体だけでなく、頭もフル回転するので、ものすごく体力のいることなんです。ハードな一日が終わると、もう夕食も食べたくないくらいクタクタ。だけどしっかり食べないと体力が続かない。そんな厳しい環境をぜひ一度体験してみてください。
Q: コンテをやったことがないので、5日間もできるか不安です。
A: 講師もスタッフもプロ集団のウェルズです。質問や不安なことがあったら、いつでも声をかけてください。1日目には理解できなかったことが、3日目には分かるように、5日目にはご自分のものになっていることでしょう!ひとりひとりレベルは違っても、丁寧に指導する、それが指導者として尊敬を集めるリー・スマイクルの信条です。
Q: どうしてバレエもやるんですか?
A: ウェルズがコンテンポラリー・ダンスの5日間講習会をしたい、と相談したとき、イギリスのバレエ学校の先生方は皆さん「Good Idea!!!!!」と絶賛してくださいました。コンテンポラリー・ダンスを勉強することで、バレエにどれほど良い影響があるか、皆さんよくご存知なんですね。コース中にバレエのクラスを組み込むことで、受講生の皆さんがそれぞれ自分で、バレエとコンテの関係性を身体で実感することができる。そしてまた、クリエイティブのクラスでは振付や創作、即興を経て、自分らしさを見つけていける。「自分らしさ」を持つダンサーは、どのジャンルでも最強です。
Q: コンテンポラリー・ダンスのダンサーはバレエができないとダメですか?
A: コンテンポラリー・ダンスのダンサーがバレエをやっていなくてはいけないとは考えていません。ですが、現在イギリスのコンテンポラリー・ダンスの専門学校では全て、毎日または少なくとも週に3回はバレエのクラスがあります。朝、バーレッスンで、自分のセンターを確認したり、筋肉の調子を整えたりという意味でも大切な時間なんですね。またセンターでは音楽性やダイナミクスも勉強します。コンテの動きも取り入れた、なかなか難しいアンシェヌマンですよ!
Q: 演奏家も来るようですが。
A: ウェルズの講習会ではCDは使いません。それが私たちのひとつのこだわりでもあります。生の音楽には、命があります。ピアノであれ、太鼓であれ、たとえシンセサイザーであっても、演奏者とダンサーの間に生まれる一体感や昂揚感は格別です。生演奏で踊っていただく機会を1日でも増やしたい思いから、いつも演奏家の方をお願いしています。そしてコンテンポラリー・ダンスでは、演奏家がダンサーに合わせて、またダンサーをリードして、その場で即興演奏することも少なくありません。そして実は即興のうまい演奏家と組むと、講師もまた刺激を受けて、普段より更にパワーアップしたレッスンになるのです。
Q: 将来、バレリーナを目指しています。コンテは必要ですか?
A: プロのダンサーになると、国籍やバックグラウンド、舞踊スタイルの異なる様々な振付家や芸術監督と仕事をすることになります。そんな時、自分の固定観念にとらわれず、新しいものを常に理解し、自分の中に取り入れて行こうとする柔軟で積極的な姿勢はとても重要となります。振付家の意思を正しく理解し、体現し、その上さらに自分らしさを出すには、自分の中にもそれだけ多くの引き出しを持つ事が大切ですね。
自分の中の新しい可能性を発見するために、自分らしい表現力を身につけるために、今までの殻をぶち破って、ダンサーとして、表現者として、大きく羽ばたくきっかけにしてくださいね!
第3回英国コンテンポラリー・ダンス・サマー・インテンシヴ2017
※日英ダンス協会と共催