さて、いよいよリアム・スカーレット版の「白鳥の湖」の幕が開きます。
短いプロローグでは、
プリンセスが白鳥に変えられてしまう場面を
手短に黒い紗幕の裏で見せて完了です。
舞台は一転、
豪華な城の門が開かれ
中から王宮の人々が現れ、
ワルツやポロネーゼが楽しく踊られます。
スカーレット自身もインタビューで語っていたように
彼のトレードマークのムーブメントは殆ど見れないものの、
非常に洗練された美しさで終始する踊りたちです。
特に男性のランベルセや
チェケッティの美しいポール・ド・ブラ
上半身を思い切り捻ったアティチュードの連続に
嬉しさがこみ上げてきます。
「ああ、リアム、ありがとう!」
これまで使われなかったチャイコフスキーの音楽も
加えられていますが、
とても長くなってしまったので、
少し切り取らなければならないところも
あったようです。
映画の編集と同じですね。
(ノーカット版も観てみたい!)
ロシアでの初演時の失敗
そしてチャイコフスキーが亡くなるまで
このバレエが評価されることがなかったのは
有名な話です。
当時はバレエと言えば
ワルツやポロネーゼでしたから、
チャイコフスキーの音楽は
「交響曲的すぎてバレエには向かない」
と判断されてしまったのですね。
音楽を人一倍愛するスカーレットが
チャイコフスキーの音楽を
生き生きと再現してくれました。
(チャイコフスキーが生きていたら
どんなに喜んだことでしょう!)
有名なパ・ド・トロワは
王子ジークフリートの親友と王子の妹姫ふたりです。
振付に大きな変更はありませんが、
やんごとなき姫君たちですから
とてもノーブルに踊ります。
ここで私たちは
魔法使いロットバルトが女王のアドバイザーとして
身近に仕えていることを知ります。
そして場面は湖へ。
マクファーレンは全4幕に交互に現れる
明と暗、光と闇を
鮮明に描き出しています。
湖畔には大きく突き出した岩
空にはぼんやりと満月が浮かんでいて
辺りの空気がよどんでいることが分かります。
そして深い森の緑に覆われた陸地。。
チャイコフスキーの美し過ぎる
ヴァイオリンスコアにのせて現れる
一羽の純白の白鳥。
美しさに息をのむ瞬間です。
合わせて1時間の1幕と2幕は
あっという間に過ぎ去り
幕間休憩は25分
白鳥は大作だけに休憩時間が短くて
コールドバレエやソリストのダンサーたちは
早替えが大変だろうなと思いつつ、
新しくできたバルコニーで
社交の楽しい時間を過ごします。
そしていよいよ黒鳥の登場する
第3幕に突入です。
城内は豪華な門から想像される以上の
素晴らしさ。
金泊に覆われた玉座の周りに
相応しい衣装に身を包んだ宮廷の人々
かなりの財政を誇る王室であることが分かります。
ロットバルトが狙うのも無理ありませんね!
彼は既に宮廷に入り込み
玉座乗取り計画を遂行しているのです。
ここからは
花嫁候補の姫君たちの踊り
各国の民族舞踊など
スカーレットの本領発揮です。
中でも男性4人と女性1人のスパニッシュでは
男性たちの極高速ステップに
女性の強く柔らかい動きが対照的で
素晴らしい!
スカーレットは自分もダンサーとして活躍していましたから
リハーサル中には自分で見本を見せたりして
その要求も半端ではないそうです。
ナポリの踊りは
アシュトン振付を残しました。
ここはやはり、ロイヤル・バレエの伝統として
引き継がれるべき踊りですね。
ここも、ありがとう、リアム!です。
オディールと王子のパ・ド・ドゥなど
古典の美しさを残し
プリンシパル・ダンサーたちの力量に任せています。
第4幕の湖畔シーン。
ここにはまたリアムの振付が加えられています。
美しく、悲しいエンディングでした。
今回は2キャストしか観ることができませんでしたが、
これ以上ロンドンに長居していたら、
きっと大散財だっただろうと思うと、
また次回の再演を心待ちにした方が
いいのかもしれません(笑)
つづく。